世の中は「コスパ」だの「タイパ」だのと騒がれているが、なんだかそれに追われて忙しない日常を送っている気がする。増税は進み、賃金はなかなか上がらず、社会保険料や厚生年金はどんどん高くなる。しかも将来、本当に厚生年金がもらえるかどうかも怪しい。そんなことを思っている院長である。
そもそもコスパやタイパを追い求めている人間が、どれくらい実際にコストを削減できているのか、どれくらい効率的に時間を使えているのか、正直疑問である。もし本当に「タイパ」だけを考えるなら、歯なんて抜いて総入れ歯にしたほうが、毎日の歯磨きの時間も短縮できて合理的ではないか。だが現実にはそんなことはしない。なぜなら噛めなくなるからだ。
有歯顎と無歯顎では噛む力に圧倒的な差がある。だから歯はあったほうがいい。しかし「歯がある=なんでも残した方がいい」というわけではない。根がぼろぼろで周囲の骨に悪影響を与えている歯を無理に残しても仕方がない。むしろ骨が溶けてしまうリスクすらある。患者さんの中には「抜きたくない」という人も多いが、正直なところ我々歯科医師も簡単に抜きたくはない。抜歯は血も出るし、れっきとした外科的処置であり、決して「はい終わり!」と15分で済むような簡単な行為ではないからだ。だからこそ、患者さんから「歯医者で抜かれた」と言われると、毎回少し嫌な気持ちになる。こちらとしては「歯医者で抜いてもらった」と思ってもらえたほうがよほど救われる。
さて、話がそれたが、ここで本題。なぜ「コスパ」や「タイパ」を声高に語る割に、歯をきちんと磨かない人が多いのだろうか?磨いている人は問題ない。むしろ胸を張っていいし、ぜひかかりつけの歯医者に通い続けてほしい。できればエンプレス歯科に来てもらえるとうれしい。
歯磨きは本当に大事だ。少しの時間で虫歯や歯周病のリスクを大きく減らせるのに、なぜやらないのか。よく「忙しくて」と言われるが、忙しくない人間なんていない。1分も取れないほど皆が常にせわしなく動いているのか?違うだろう。テレビやYouTube、TikTok、Netflix、Amazon……情報社会にどっぷり浸かる時間はあるはずだ。そのうちの5分を歯磨きにあてるだけで未来の自分の口を守れるのに、それを「コスパがいい」となぜ思えないのだろうか。
今日の院長の考えはここまで。今回は「歯磨きをしないのは不思議だなあ」という話で終わりにする。次回は「じゃあ歯磨きはどうやったらいいのか?」について、患者さん向けにわかりやすく書いていこうと思う。エビデンスや難しい言葉は使わない。患者さんに届く言葉で、自分の気持ちをそのまま書いていきたいからだ。