「歯のお掃除」は“治療”です。
──エンプレス歯科が本音で語る「SPTの真実」──
■ “クリーニング”という言葉の誤解
みなさん、「歯のお掃除」と聞くと、どんなイメージを持ちますか?
「歯石を取って、ツルツルにするやつでしょ?」
「ただのクリーニングでしょ?」
……残念。それ、まったく違います。
実際には、SPT(Supportive Periodontal Therapy)=歯周病安定期治療と呼ばれる治療行為です。
歯ぐきの下の見えない部分で炎症を再発させないために行う、非常に重要な“医療的処置”なんです。
「掃除」と言うと、単に表面の汚れを取るイメージですが、SPTは“病気の再燃を止める”ための継続治療。
つまり、「治ったあとの再発を防ぐ治療段階」であり、歯科の中でもっとも長期的に価値を生む工程です。
■ 「掃除」ではなく、「再発を防ぐ治療」
もし“ただのブラッシング”で済むなら、私たち歯科医もわざわざ「1ヶ月ごとに来てください」とは言いません。
半年に1回で十分です。
でも実際は、そうはいきません。
人間の歯ぐきの中は複雑で、歯と歯ぐきの境目(歯周ポケット)に溜まる細菌バイオフィルムは、時間とともに石灰化して歯石になります。
この歯石はブラシでは落とせず、超音波スケーラーやキュレットといった専用器具でしか除去できません。
SPTでは、歯の表面だけでなく、歯肉縁下(歯ぐきの中)まで徹底的に清掃します。
つまり「掃除」ではなく、「外科的ではない治療」なんです。
([J Clin Periodontol. 2021;48:1317–1328])
■ 「何回も通うの?」と思う気持ち、痛いほどわかります
「仕事もあるし、毎月なんて大変」
「痛くもないのに、なんで?」
そんな声を聞くたびに、正直こちらも心苦しくなります。
でも歯周病は“静かに進む病気”です。
痛みも、しみる感覚も、ほとんどありません。
気づいたときには、歯を支える骨がすでに溶けていることも多い。
歯周病を家にたとえるなら、シロアリの被害に近いです。
外から見たら綺麗でも、内側では構造が崩壊している。
そして、一度失った骨は自然には戻りません。
だからこそ、定期点検=SPTが唯一の予防線なんです。
■ 「毎日磨いてるのに」と言う人ほど危ない?
実は、完璧に磨けている人はほとんどいません。
成人の約8割が、歯周ポケット内にプラークを残しているという研究もあります。
([J Dent Res. 2020;99(7):799–806])
どんなに真面目に磨いていても、人間の手では届かない死角があります。
歯並び、ブリッジ、奥歯の裏側――特に歯ぐきとの境目は非常に難しい。
SPTでは、そうした磨き残しを顕微鏡レベルで除去し、再付着しにくい歯面環境を維持します。
さらに、歯科衛生士が患者さん一人ひとりの磨き癖を把握し、ブラッシング圧・角度・フロスの使い方まで指導します。
つまり、SPTとは「掃除+教育+再発抑制」の総合治療なんです。
■ 「売上目的で呼んでる」わけではありません
ここは誤解されがちなポイントです。
「何度も通わせて、儲けたいんじゃないの?」と疑われることがあります。
でも現実は逆で、短い間隔の通院は医院側にも負担です。
SPTは、炎症の再燃を防ぐための治療であり、医学的エビデンスに基づいて設定されたリコール間隔です。
歯周病の再発率は、SPTを3ヶ月以内で受けた人と6ヶ月以上空けた人では、およそ3倍以上の差が出ると報告されています。
([J Periodontol. 2019;90(7):739–748])
つまり、私たちが「1ヶ月後に」とお願いするのは、“守るための最短ルート”なんです。
■ サボるとどうなるか——“静かに進む崩壊”
「今回は忙しいから次でいいや」
その1回の延期が、何年後かの結果に大きく響きます。
歯周病は、炎症が再発すると骨吸収スピードが一気に上がります。
気づかないうちに支えを失い、噛み合わせがズレ、最終的には“噛めない口”になる。
そして、抜歯後の修復治療は時間もお金もかかります。
SPTの数千円は、“未来の何十万円を防ぐための保険”です。
歯を失うというのは、食事や発音、笑顔の質を失うということ。
それを防ぐための治療がSPTです。
■ 子どもの虫歯も、構造はまったく同じ
子どもの歯はエナメル質が薄く、虫歯の進行がとても早い。
しかも子ども自身が口腔管理をコントロールできません。
だからこそ、短い間隔で診る意味があるのです。
「嫌がるから歯磨きしていない」
「夜は眠くて、仕上げ磨きまではできない」
そういう話を聞くたびに思うのは、たった2分で未来が変わるということ。
仕上げ磨きは1人あたり2分。
テレビを観ながらでも、寝る前の5分で十分。
その時間を惜しんで虫歯が増えたら、子どもは治療の痛みを覚え、歯医者嫌いになります。
結果的に通院回数も費用も増える。
歯磨きは“教育”であり“愛情”なんです。
■ 歯医者を「怖い場所」にしないでください
治療前に「痛いことしてもらうよ」「麻酔なしで頑張ろうね」などと声をかける親御さんがいます。
でも、その一言で子どもは歯医者を「怖い場所」と認識します。
さらに、「何もしないよ」と言って治療が始まると、信頼が崩壊します。
「裏切られた」と感じた子は、次から口を開けなくなります。
私たちは、痛みを最小限にする技術と経験をもっています。
だから、どうか“歯医者を悪者にしないで”ください。
信頼があってこそ、治療はスムーズに進みます。
■ 母子分離は「冷たい対応」ではなく「成長のプロセス」
小児歯科でよく行う母子分離は、親子を引き離すためのものではありません。
むしろ、子どもの自立心を育てるトレーニングです。
親が横にいると、どうしても甘えが出ます。
でも、一人で椅子に座り、スタッフとやりとりできた経験は、小さな自信の種になります。
治療後に「がんばったね」「えらかったね」と褒めてあげるだけで十分。
この繰り返しが、歯医者への恐怖を信頼へ変えていきます。
■ 通院を減らす方法は、あなたの手の中にある
最終的に理想なのは、「歯医者に呼ばれない人」を増やすこと。
つまり、ご自身のケアが安定していれば、通院間隔は確実に延ばせます。
SPTでは、磨き残しの傾向を可視化し、生活習慣のアドバイスを行います。
ホームケアが整えば、3ヶ月→4ヶ月→半年へと間隔を広げていけます。
この「リコールの自由」は、あなたの努力の成果です。
■ SPTは「医療」×「習慣」の両輪
SPTの本質は、“医療行為”と“生活習慣改善”の融合です。
定期的なプロケアと、毎日のセルフケア。
この2つの歯車が噛み合って初めて、歯周病は再発を防げます。
歯医者が治すのではなく、あなたと一緒に守る。
それがエンプレス歯科の考え方です。
■ 最後に──未来の自分への投資
「歯のお掃除」と軽く聞こえる言葉の裏には、
“今の健康を未来に引き継ぐ”という本質があります。
歯を失えば、食事の楽しみも笑顔も失う。
でも、SPTはそれを防ぐための最前線です。
治療後こそが、本当のスタートライン。
毎日の5分、月に一度のSPT。
その積み重ねが、10年後のあなたの笑顔を作ります。
エンプレス歯科からのメッセージ
歯を守るのは、歯科医ではなく“あなた自身”です。
私たちはその手助けをするパートナー。
一緒に、健康で美しい歯を育てていきましょう。


