なぜ歯医者は何度も通うの?保険診療の仕組みを相模原の院長が解説

歯医者の通院回数が多いのはなぜ?保険診療の仕組みから院長が正直に答えます

カテゴリ:保険診療 / よくあるご質問


「また来てください、って言われたけど、なんで一回で終わらないんだろう」

こういうことを思ったことがある方、正直に手を挙げてほしいです。実際、診察室でもよく言われます。「先生、あと何回来たらいいですか?」って。

結論から言います。複数回通院が必要になるのは、治療の性質・保険制度のルール・患者さんへの配慮が重なった結果です。「何回も呼んで儲けようとしている」というのは、保険診療の仕組みを知ると「それはない」と分かります。

この記事では、院長である私が保険診療の点数制度の話も交えながら、通院回数が増える理由を正直にお伝えします。


保険診療の点数制度とは?

歯科の保険診療では、すべての医療行為に「点数」が設定されています。1点=10円で換算され、患者さんはその3割を自己負担します。

主な点数の例(令和6年度)はこちらです:

診療内容点数(目安)患者さんの3割負担(目安)
歯科初診料267点約800円
歯科再診料58点約170円
歯石除去(スケーリング)約240〜750点口腔内の状態による
根管治療(神経の治療)約440〜1,500点歯の種類・難易度による

※2026年4月改定により初診料は272点に変更予定

ここで注目してほしいのが「再診料58点=患者さんの負担は約170円」という点です。

医院が受け取るのはその7割、約400円。人件費・材料費・設備費を差し引いたら、再診料だけでは明らかに赤字です。実際、歯科医院の給与費は医業収益の約49%を占めることが報告されています(第25回医療経済実態調査)。

「再診を繰り返しても、歯科医院の経営は全くプラスになりません」——これが正直なところです。医院の収益は、実際の処置に対して発生する「処置料」が主体です。


通院回数が増える4つの理由

① 治療そのものが複数回を必要とする

これが一番シンプルな理由です。

  • 軽い虫歯なら削って詰める、1〜2回で終わることが多い
  • 神経に近い虫歯は3〜5回かかることがある
  • 根管治療(神経の治療) は消毒・確認を繰り返す必要があるため、前歯で3〜4回、奥歯で5〜6回以上かかることも
  • 被せ物・ブリッジ は型取り→技工所での作製→装着、最低2〜3回必要
  • 歯周病治療 は歯石除去→経過観察→再評価という段階が医学的に必要

これらは治療の医学的な性質によるものです。「一回でまとめてやってほしい」というご要望があることは理解していますが、安全で確実な治療のためには段階を踏む必要があります。

② 保険制度上の算定制限がある

知っておいてほしいことがあります。保険診療には「同一日に算定できる処置の組み合わせ」に一定の制限があります。

例えば虫歯治療と歯周病治療を同日に大量にまとめて行うと、本来算定できるはずの点数が算定できなくなる場合があります。これは医院側の判断ではなく、保険制度のルールによるものです。

「分けてやった方が儲かるから分けている」という誤解が生じやすいのですが、実際はルールに従った結果として複数回になることも多いです。

③ 患者さんの体への配慮

口を長時間開け続けることは思った以上に体への負担があります。1回の診療時間は一般的に30〜60分程度が目安で、それ以上になると緊張・疲労・顎の痛みが出やすくなります。

特に高齢の方、歯科が苦手な方、緊張しやすい方は、短時間で複数回に分けた方が安全・安心に治療を受けていただけます。これは患者さん思いの判断です。

④ 予約枠の管理と他の患者さんへの配慮

予約制の歯科医院では、1人の患者さんに長時間の枠を確保すると、その方がキャンセルした場合に他の患者さんの診療に影響が出ます。適切な枠設定は、すべての患者さんに公平に対応するための工夫でもあります。


定期検診・メンテナンスをすすめる理由

治療が終わったあとも「また来てください」と言われることがあります。これにも理由があります。

再発・悪化を防ぐため

虫歯も歯周病も、治療しただけではまた再発します。日々のセルフケアだけでは取り切れない汚れ(バイオフィルム)を定期的に除去することが必要です。

長期的に見るとコストが下がる

小さな虫歯のうちに対処すれば保険診療で数千円ですが、放置して神経まで達すると治療費は数倍になります。さらに最悪の場合は抜歯で、その後インプラントや入れ歯が必要になることも。

定期検診は「歯の保険」です。払い続ける方が、最終的に安く済みます。

当院の本音

定期検診の点数は正直、高くありません。「定期検診に呼び続ければ儲かる」というのは誤解です。ただ、長く健康でいていただける患者さんが増えることが、地域の歯科医院としての存在意義だと思っています。


よくあるご質問

Q. なぜ一回で全部終わらせてくれないのですか?
治療内容によって、医学的に複数回が必要なものがあります。神経の治療・歯周病治療は特に段階的に進める必要があります。また保険制度上の制約もあります。

Q. 歯石除去を上下で日を分けるのはなぜですか?
保険診療のルールとして、歯周病治療として歯石除去を行う場合、上顎と下顎を分けて算定するルールがあります。1回でまとめて行っても保険上算定できない点数が発生するため、分けて行うのが一般的です。

Q. 再診料だけで歯科医院は儲かりますか?
再診料(58点=約580円)だけでは全く採算が取れません。収益の主体は処置料です。再診回数を増やすだけでは収益は上がりません。

Q. 初診料と再診料の違いは?
その医院に初めてかかる場合、または1ヶ月以上間隔が空いた場合は初診料が算定されます。継続通院中は再診料となります。初回は口腔内全体の検査・診断に時間がかかるため、初診料の方が高く設定されています。

Q. 通院回数を減らせますか?
可能な範囲でご希望にお応えすることは検討できます。ただし、治療の安全性・品質を優先するため、すべてのご要望に応えられるわけではありません。まずご相談ください。

Q. 定期検診は絶対に必要ですか?
強制ではありません。ただ、歯を長く残したい方・将来的な医療費を抑えたい方には、1〜3ヶ月に一度の定期検診を強くお勧めしています。


最後に

「今日は何をするの?」「あと何回かかる?」という質問は、どんどんしてください。

当院では治療の都度、今日の処置内容と次回の予定をご説明することを心がけています。通院回数や費用についてご不安があれば、受付でも私に直接でも、遠慮なくお申し付けください。


参考文献

  1. 令和6年 別表第二 歯科診療報酬点数表(A000初診料267点・A002再診料58点), 厚生労働省
  2. 第25回 医療経済実態調査(医療機関等調査)報告(給与費比率49%等), 厚生労働省
  3. 令和6(2024)年 社会医療診療行為別統計の概況, 厚生労働省
  4. 診療報酬算定の実施上の留意事項(歯科:A002再診料の取扱い等), 厚生労働省

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